国立情報学研究所の新井紀子教授らが全国約25,000人の中高生を対象に読解力の調査をしたところ、その多くが教科書レベルの文章を理解できていないということがわかりました。
その原因のひとつが、基本的な語彙力の不足です。
子どもにとって、知っている言葉の数が豊富だと、文章を読むときの負担が少なく、内容理解もスムーズになります。
また、教えられたことがしっかりと理解できるので自信を感じられます。
更には、コミュニケーション力、表現力、創造力にも繋がっていく重要な力です。
このあたりの話は、国語セミナーでもお話します。
では、語彙を増やすにはどうしたらよいのでしょう?
大人との会話
東北大学の川島隆太教授らの研究によると、親子で様々な内容の会話を多くもっていると、子どもの言語機能に関わる脳の領域が良好に発達することがわかっています。
ベネッセの調査でも身近な人、特に親や祖父母、親戚、学校の先生といった年齢差のある人と話す頻度が高いほど、語彙力が高くなる傾向がみられます。
大人との会話は、子ども同士では出合うことのない新しい語彙を増やし、表現力を伸ばすことにつながります。
すぐに返事をする
意外と知られていないかもしれませんが、応答のタイミングが早い親の子どもは、語彙力が高く、発話量が多くなるという調査結果があります。
子どもの発話に親からの反応が薄かったり、なかったりすれば、自分から話そうという気がなくなるのは分かる気がします。
かといって、話が終わらないうちに、あるいは最後まで聞かずに返事をするのはダメですよ(笑)
聞き役になる
興味深い調査結果があります。
それは、親の話す時間が短いほど、子どもが話す機会が増えるということです。
つまり、「親が聞き役になるのが良い」ということです。
子どもの言葉に対して、親が長い返事を返してしまうと、子どもは次の一言が出にくくなります。
短い返事をたくさん返せば、子どもはたくさん話すようになります。
例:子どもが「あ!恐竜だ!」と言った場合。
〇「恐竜ってすごく大きいね」
⇒子ども「どうして恐竜は絶滅したのかなあ」「首が長いのは、キリンのように草を食べるためなのかなあ」
×「恐竜2億4330万年から2億3323万年前の三畳紀中期に出現したものが起源なんだよ。全盛期はジュラ紀と白亜紀で・・・ペラペラペラペラ」
⇒子ども「・・・・・・・・・・・・」
ゆっくり、はっきりと
小さい子どもは、親の話を聞いて真似をすることで言葉の音を覚えていきます。
子どもが聞き取りやすいように、ゆっくり、はっきり話しかけることで、言葉の獲得がスムーズになります。
本、漫画、新聞
語彙を増やすには書くことも大切ですが、読書量が多いほど語彙力が高いことがわかっています。
語彙力が最も多いメディアは、本と新聞です。
次に、雑誌、漫画となります。
家族が集まるような場所に、それらを置いておくことで、目に入る語彙を増やすとよいでしょう。
リビングに辞書
高校生、大学生を対象にしたベネッセの調査によると、わからない言葉に出合ったら、そのままにせずに調べようとする子は、語彙力が高い傾向が見られます。
「〇〇ってどういう意味?」と聞かれたら、「調べてみようか」と言って、親子で一緒に調べることで、辞書を引く習慣が身につきます。
いつもすぐに手が届く場所に辞書があれば、調べやすくなります。